咀嚼筋 その2 側頭筋

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物を噛んでいる時にこめかみの部分を触ると、筋肉が動いているのを感じることができます。この筋が側頭筋です。
側頭筋は図のように、側頭部全体にわたっているので、筋の動きは耳の上のほうまで感じることができます。いわゆるこめかみの部分は筋が厚くなっているので、動きを最もよく感じられる部分となります。

「こめかみ」という言葉は日本古来の言葉で、「米噛み」に由来します。米以外のものを噛んでももちろん動きますが、日本人は主食として米を食べてきたことからついた名前だと思います。

英語やラテン語では側頭筋を m. temporalis と言います。 tempo- (テンポ) は時間とか、速度の意味で、この部分で脈が計れる(浅側頭動脈)、ということや、この部分は白髪が目立ち、人生の「時」を感じさせる、ということで付けられた名前と言われています。

日本語の側頭骨や側頭筋は名前に変遷がありました。解体新書のころは太陽骨(筋)、次いで明治から昭和にかけて顳顬骨(筋)、現代になってから側頭骨(筋)となりました。太陽の名前は骨や筋が丸く、特に骨は縁の部分から光のようにとげ状のものが出ていることから来ました。顳顬(しょうじゅ)は中国語でこめかみの意味で、この時代はtemporal の翻訳になっていました。しかし、この字は難しすぎるので昭和10年頃から側頭骨になりました。

この筋の停止部は筋突起という一点に集中していますが、起始部は側頭骨に広がっています。全体として下顎骨を引き上げることが主な機能ですが、後ろの筋束は下顎を後ろにも引きます(後ろ向きの青矢印)。昨日の国家試験問題の解答もこれがわかっていればより簡単に解けます。

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この筋は肉食獣や霊長類で発達しています。ゴリラの場合は左右の側頭筋が頭頂部の矢状稜のところまであり、頭のてっぺんが盛り上がっています。後頭骨には後頭稜があり、ここも側頭筋の起始になります。すなわち赤矢印の部分は側頭筋で埋まっていることになります。強力な咀嚼器と大きな体を維持するにはこれだけの筋がないとならないのかもしれません。

人間の場合、こめかみから耳の上あたりにしかなく、側頭筋は退化しており、その分、脳や頭頂部が大きくなったとも言えます。


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  • プラダ トート

    Excerpt: 咀嚼筋 その2 側頭筋 森を歩こう人体編/ウェブリブログ Weblog: プラダ トート racked: 2013-07-05 17:56