歯の萌出順 その2

前回の小児歯科学会の全国調査は20年以上前です。それ以後、大きな調査は行われていません。平成になってからも同じような傾向は続いているのでしょうか。

大学の前に古ヶ崎小学校があり、ここの学童を対象に最近数年間の調査を行いました。その2002年の結果が下のグラフです。

グラフの読み方は前回と同じです。これを見ると、下顎第1大臼歯と中切歯の差はほとんどありませんが、男子では中切歯が早く萌出し、やはり逆転現象が起こっています。20年前に行われた調査の傾向は平成になっても継続していると考えてよさそうです。

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ところで、これまでは日本人のことでしたが、外国ではどうなのでしょうか。
下はGarn というアメリカの有名な成長学者が調査した萌出順の結果です。今から30年以上前の資料です。

下顎永久歯の萌出順 (アメリカ白人)
Garn et al., 1973 (N>1,000)

             男子     女子
  中切歯        6.30       6.18
  側切歯        7.47       7.13
    犬歯     10.52        9.78
第1小臼歯      10.70       10.17
第2小臼歯      11.43       10.97
第1大臼歯       6.33       6.15
第2大臼歯      12.00       11.49

単位は年で、すべて1000人以上の平均値です。たとえば6.5は6歳6か月を指します。先ほどの古ヶ崎小学校同様、第1大臼歯と中切歯の差はほとんどありませんが、男子では中切歯が早く萌出しています。女子はわずかながら第1大臼歯が早いようですが、萌出順は個人差が大きいので有意差はありません。

こうして見ると、アジア、アメリカ、世界各地でこのような現象がみられているものと思われます。この現象は最近の子どもの体格の変化、あごの成長の仕方、栄養状態などと関連しているものと思います。

下の図は有名なWheelerという人の古典的な歯の成長の教科書の図です。1941年の出版です。第1大臼歯が中切歯より早く生えている様子が描かれています。あれから60年以上経過し、戦後の人々の体格や取り巻く環境も激変し、萌出順も変化が出てきているという状況の中でWheelerの教科書がどうなっているかと思い、2003年の改訂版を見てみました。

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内容も体裁もずいぶん新しく変わっていましたが、この図は変わっていませんでした。伝統のある図で、どこにでも引用される図ですのでそう簡単に書き換えるというわけにはいかないのかと思いますが、そろそろ一考を要する時代になってきたようです。

来週は化石の人類や現生霊長類ではどうなっているか、お知らせします。

この記事へのコメント

アデレード君
2008年04月21日 18:47
萌出順に関して私も調べてみました。Lery(2008)の論文ではベルギー北部、フランダース地方の1989生まれの小学生の縦断データを使ったものですが、下顎の中切歯が最も早く萌出しているようです。

他にもKochhar(1998)がもちいた北アイルランドの資料にも同様な傾向がありました。

過去と比べて下顎第一第臼歯と下顎中切歯の萌出に逆転がみられるのは日本だけではないように思われます。

近年なぜ、この様な逆天現象がおきているのか、論文の中ではあまり触れられていません。

もう少し調べてみたいと思います。
松戸解剖
2008年04月21日 19:03
ありがとうございます。アデレード君のおかげで研究が進みました。2008年の論文があるとは知りませんでした。やはり中切歯が早いので安心しました。これからも新しい情報あったら教えてください。


アデレード君
2008年04月22日 10:35
訂正です。LeryではなくLeroyでした。雑誌名はEur J Oral Sci 116 p11-17 2008 です。失礼しました。

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