解剖学と文学 2

1988年の第100回芥川賞は南木佳士の「ダイヤモンドダスト」でした。南木佳士は佐久総合病院に勤務する医師で作家です。ダイヤモンドダストは死と日常的に直面する医師という職業から見た矛盾について書いた小説でしたが、その後「医学生」という小説も発表しています。

こちらは解剖学実習で同じ班になった4人の医学部時代から中年になるまでの軌跡を追った作品でそこに著者自身が投影されているというものです。解剖学実習や解剖学の試験の様子などがかなりのスペースを割いて描写されています。遺体や死に対する考えがいかにも学生らしく赤裸々に、というか正直に描かれています。そのあたりも作者の意図なのかと思います。

指導する教授もいかにも朴訥な感じで登場します。あまりいい印象の描き方ではありませんが、モデルがいたのでしょうか。気になるところです。

ある種の挫折感を持って入った医学部、その中で悩み、考え、挫折しながらも、何とか医師として一人前になって行く青春群像、といったところでしょうか。

最後に著者あとがきがあります。
「若いころに捨て去ったはずの故郷が、ある年齢になるとたまらなく懐かしくなったりする。「医学生」執筆の動機は正にこの感情であった。 ・・・・幸か不幸か、秋田大学医学部は型枠の基礎すらできていない段階だったので私は自分で自分を作るしかなかった。このあたりに作家としての出発点があったような気がする。そこに思い至るとあれほど嫌っていた秋田での生活がなんだかたまらなく懐かしくなり、あれはあれで貴重な青春だったのだと了解できるようになった。・・・」

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